13:29 2024/04/07 (日) start

微分方程式のエッセンス

変数分離形1階完全微分方程式1階線形微分方程式


経済学でも微分方程式を取り扱う。学生時代、1回生のみ教養科目の数学で2回生以降、数学科目が経済学部では存在しなかったので、独習で洋書などで学んでいた。今もチャレンジ中である。厳密性に欠けるかもしれないが、エッセンスを紹介していきたい。なお、経済学では時間の連続関数とみて微分方程式を取り扱うが、時間を期間的に取り扱う定差(差分)と和分という若干、微積分に似た概念がある。
微分方程式は導関数要素を含んだ方程式である。\(\dfrac{d^2y}{dx^2} - 2\dfrac{dy}{dx} = 3 \) や \(t^2\,dx = 4\,dt\) のような形である。微分方程式の解法を会得することは役に立つ。なぜなら、微分方程式が多くの数学の応用群に当然巡り合うからである。
様々な解法技術が異なる種類の微分方程式を解くために使われていることから、微分方程式がどのように分類されているかを知り、そういったものと組み合わさった術語に慣れ親しんでおくことは有用である。
微分方程式の種類
 \(\bullet\)常微分方程式は1個の独立変数を持ち、常微分のみに関係する。\(\dfrac{d^2 y}{dx^2} + 2x \dfrac{dy}{dx} = 1 \) (\(x\)が独立変数) , \(\dfrac{dx}{dt} + \dfrac{dy}{dt} = xy\) (\(t\)が独立変数で、関数\(x\)と\(y\)は\(t\)のみに依存する)。対比として、偏微分方程式は偏微分に関連する。例えば、\(t\dfrac{\partial^2 y}{\partial x^2} = x \dfrac{\partial^2 y}{\partial t^2}\)は偏微分に関係する。その\(x\)と\(t\)がそれぞれ独立変数で、\(y\)は\(x\)と\(t\)の両方に依存する。偏微分は多変数関数で考察対象の変数のみを動かした微分をいう。 なお\(\dfrac{d}{dx}\left(\dfrac{dy}{dx}\right)= \dfrac{d^2 y}{dx^2}\) , \(\dfrac{\partial}{\partial x}\left(\dfrac{\partial y}{\partial x}\right) = \dfrac{\partial^2 y}{\partial x^2}\)である。
 \(\bullet\)微分方程式の階数は微分方程式の一部である最高次の微分を参照する。例えば、\(\dfrac{dx}{dt} = -2t\)は一回目の微分であるから、1階、\(\dfrac{d^2 y}{dx^2} - \dfrac{dy}{dx} + 1 = 0\)は2回目の微分であるから、2階である。
 \(\bullet\)常微分方程式は次の形であれば線形である。
\(a_{n} (x)\dfrac{d^n y}{dx^n}+a_{n-1} (x)\dfrac{d^{n-1} y}{dx^{n-1}}+ \cdots +a_{2} (x)\dfrac{d^2 y}{dx^2} + a_{1} (x)\dfrac{dy}{dx} + a_{0} (x)y = g(x)\)
ここでの全ての係数は独立変数\(x\)の関数であるか、定数である。従属変数\(y\)の関数ではない。従属変数や微分に指数が付与されていない。つまり、\(y^n\)や\(\left(\dfrac{dy}{dx}\right)^n \)の形が含まれていない。
1階線形常微分方程式は\(a_{1} (x)\dfrac{dy}{dx} + a_{0} (x)y = g(x)\)で、2階線形常微分方程式は\(a_{2} (x)\dfrac{d^2 y}{dx^2} + a_{1} (x)\dfrac{dy}{dx} + a_{0} (x)y = g(x)\)となる。
非線形微分方程式の例として、\(\dfrac{dy}{dx} = y^3 , \dfrac{d^2 y}{dx^2} + \left(\dfrac{dy}{dx}\right)^2 =1 \)である。前者は\(g(x) \)の部分が\(y^3 \)という\(y\)の関数であり、後者は微分に指数がある。
 \(\bullet\)2階以上の線形微分方程式は\(g(x) = 0 \)のとき、同次と呼ばれる。\(a_{2} (x)\dfrac{d^2 y}{dx^2} + a_{1} (x)\dfrac{dy}{dx} + a_{0} (x)y = g(x)\)で\(g(x) = 0\)では、\(y = 0 \)が常に同次方程式を満足する。この解を自明な解という。ただ、2階以上での同次と1階での同次とは意味が異なることを認識しておこう。後で記述する。
 \(\bullet\)1階常微分方程式で微分部分が一方に\(\dfrac{dy}{dx} = f(x,y) \)のように単独配置されたものは標準形と言われる。\(f(x,y)\)での\(y\)自体はxの関数である。
 \(\bullet\)1階常微分方程式が\(M(x,y)dx + N(x,y)dy = 0\)という形を保持するなら、微分形式と言われる。\(M\)と\(N\)は\(x\)と\(y\)の関数であるが、\(y\)自体は\(x\)の関数である。
 \(\bullet\)\(\dfrac{dy}{dx} + p(x)y = q(x)\)での1階常微分方程式は線形である。\(a_{1}(x)\dfrac{dy}{dx} + a_{0}(x)y = g(x)\)において、両辺を\(a_{1}(x)\)がゼロでないとして、除すれば、\(\dfrac{dy}{dx} + \dfrac{a_{0}(x)}{a_{1}(x)}y = \dfrac{1}{a_{1}(x)}g(x)\)であり、\(p(x) = \dfrac{a_{0}(x)}{a_{1}(x)} , q(x) = \dfrac{1}{a_{1}(x)}\)である。
 \(\bullet\)1階常微分方程式が\(A(x)dx = B(y)dy\)の形で表現可能であれば、'分離可能な'と言われる。2階以上の常微分方程式でも一方に一つの変数を持った関数、他方に一つの変数を持った関数で、それぞれ微分との積での形であれば同じく分離可能となる。例示すれば、\(\dfrac{1}{f(x)}\dfrac{d^2 f(x)}{dx^2} = \dfrac{1}{c^2 g(t)}\dfrac{d^2 g(t)}{dt^2}\)
 \(\bullet\)関数\(f(x,y)\)は\(f(tx,ty) = t^{\alpha}f(x,y)\)と表現できれば同次(斉次)という。指数\(\alpha\)は次数である。この場合\(\alpha\)次の同次(斉次)関数と呼ばれる。\(f(x,y) = x^2 - xy\)で\(f(tx, ty) = (tx)^2 - (tx \cdot ty) = t^2 x^2 - t^2 xy = t^2 (x^2 - xy) = t^2 f(x,y)\).これは2次の同次関数である。
 \(\bullet\)上の定義から\(f(tx,ty) = f(x,y)\)が成り立つ場合、標準形での1階常微分方程式は同次であり、その関数を持つ部分は\(\dfrac{y}{x}\)の比を持つ関数となる。その方程式は1階同次常微分方程式となる。例えば、\(\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{x+y}{y-x}\)において、\(f(tx, ty) = \dfrac{tx + ty}{ty - tx} = \dfrac{t(x + y)}{t(y - x)} = \dfrac{x + y}{y - x}\)となっている。ここで、\(x\)をゼロと考えず、微分方程式の右辺での分母分子を\(x\)で除すれば、\(\dfrac{x+y}{y-x} = \dfrac{1+\dfrac{y}{x}}{\dfrac{y}{x} - 1}\)と変形できる。
微分形式の場合、\(M(x,y)\)と\(N(x,y)\)が同じ次数の同次関数、つまり\(M(tx,ty) = t^{\alpha}M(x,y) ,  N(tx,ty) = t^{\alpha}N(x,y)\)であるならば、1階常微分方程式は同次である。
例)\(y^{4}dx + x^{2}y^{2}dy = 0\)において、\(M(x,y) = y^{4} , N(x,y)= x^{2}y^{2}\)であり、\(M(tx,ty) = (ty)^4 = t^4y^4=t^4M(x,y)  , N(tx,ty) = (tx)^2(ty)^2 = t^4x^2y^2 = t^4N(x,y)\)となっているので、与微分方程式は1階同次微分方程式である。ここでは\(M(x,y)\)と\(N(x,y)\)は4次の同次関数である。先述したように、1階常微分方程式の同次の定義と2階以上のそれの定義は異なることに注意しておく。
 \(\bullet\)\(M(x,y)dx + N(x,y)dy = 0\)の微分形式で表現される1階常微分方程式は、\(\dfrac{\partial M}{\partial y} = \dfrac{\partial N}{\partial x}\)を満足するならば、完全(厳密)であると言われる。その意味することは、\(dg = Mdx+ Ndy\)と表される関数\(g(x,y)\)が存在する、ということである。例えば、\(2xydx + x^2dy = 0\)において、\(\dfrac{\partial}{\partial y}2xy = 2x   ,   \dfrac{\partial}{\partial x}x^2 = 2x\)であるから、与微分方程式は完全微分方程式である。説明が前後するが、\(dg\)は全微分を意味する。\(g(x,y)\)なら変数\(x\)と\(y\)の両変数を動かした\(g(x,y)\)のトータルの増分である。\(dg = \dfrac{\partial g}{\partial x}dx + \dfrac{\partial g}{\partial y}dy\)で得られる。さて、話を元に戻して、例の場合は\(g(x,y) = x^2y + C\)が存在して、確かにその場合に\(\dfrac{\partial g}{\partial x} = 2xy  ,  \dfrac{\partial g}{\partial y} = x^2\)で\(dg = 2xydx + x^2dy\)が得られる。
 \(\bullet\)微分方程式で独立変数が明示的に出ていなければ、その方程式は自励系(autonomous)であると言われる。自励系微分方程式の一例を提示すると、\(\dfrac{d^2 y}{dx^2} - 2\dfrac{dy}{dx} + 3y = 1\). 一方、\(\dfrac{d^2 y}{dx^2} - \dfrac{dy}{dx} + 4x = 5\)はautonomousではない。
 \(\bullet\)プライムは独立変数に関しての微分を示すのに、よく利用される。\(y'' + 3y' + 2xy = 1\)で\(y''\)は2階微分、\(y'\)は1階微分である。また、物理学・工学では時間に関する微分にドットを用いる。\(\dfrac{d^2 y}{dt^2} + y = 0\) を \(\ddot{y} + y = 0\)と表現する。
 \(\bullet\)微分方程式の解は微分方程式を満足する関数である。例えば、\(y(x) = A\cos 2x\)は\(\dfrac{d^2 y}{dx^2} = -4y\)の解である。\(y(x) = A\cos 2x\)を2回微分してみる。なお、\((\cos x)' = -\sin x\)であり、\(y = \cos kx\)のときは\(u = kx\)とおいて、\(\dfrac{dy}{dx} = \dfrac{dy}{du}\dfrac{du}{dx}= \dfrac{d (\cos u)}{du}\dfrac{d u}{dx} = (-\sin u) \cdot k = -k \sin kx\)で、\((\sin x)' = \cos x\)である。さて、これから、\(\dfrac{d (A\cos 2x)}{dx} = -2A\sin 2x\)で、これをもう一回微分すると、\(\dfrac{d (-2A\sin 2x)}{dx} = -4A\cos 2x= -4 \cdot A\cos 2x = -4y\)で微分方程式の解になっているのがわかる。時に、微分方程式を解くことは難しく、気乗りのしないことが感じられるだろうが、得られた結果を上述のように確認することが前向きである。
 \(\bullet\)得られた解が微分方程式を満足するということは、その解が微分可能であることは明らかである。\(n\)階の微分方程式を解いて得た解は\(n\)個の連続的微分を有している。\(n\)階連続的微分可能であるとも言える。ツールとして数学を扱う者としてはこう理解している。考察する関数が微分可能というのは、その関数が独立変数の有効な範囲で連続で滑らかな曲線であることが十分条件である、ということであった。しかし、その関数の1次導関数が得られたからと言って、必ず2次導関数もそうだと(2回目の微分が可能)とは言い得ない。なぜなら、1次導関数が連続で滑らかであるとは限らない。従って、主観的・直感的ではあるが、\(n\)階の微分方程式を解いて得た解が\(n\)個の連続的微分を有しているとは、次々と微分して得られる解の導関数群が各々、連続した滑らかな曲線を保持するのだなと考えている。
 \(\bullet\)多くの微分方程式は無数の解を持つ。全ての解を表現するのに代数的係数を用いる。先記した\(\dfrac{d^2 y}{dx^2} = -4y \)の解である\(A\cos 2x\)は\(A\)という任意定数がついている。一般に\(n\)階の微分方程式には\(n\)個の任意定数がある。
 \(\bullet\)一般解が全ての解を総称し、独立変数及び従属変数の値の情報から、任意定数が特定化された解を特殊解(特別解)という。 ただ、微分方程式の解には一般解でどんな任意の値を任意定数に代入しても得られない解、特異解が存在することを留意しておく。一般解を得たとしても安心できない。説明が前後するが、先述の解\(A\cos 2x\)は特殊解である。定数係数2階線形同次微分方程式の解法を後でと考えているが、俯瞰しておこう。解とした元の微分方程式\(\dfrac{d^2 y}{dx^2} = -4y\)は\(a\dfrac{d^2 y}{dx^2} + b\dfrac{dy}{dx} + cy = 0\)の形から、\(a = 1, b= 0, c = 4\)の場合である。この係数に応じた一般解は\(y = k_{1}e^{0 \cdot x}\cos 2x + k_{2}e^{0 \cdot x}\sin 2x = k_{1}\cos 2x + k_{2}\sin 2x ただし、\left[k_{1} = c_{1} + c_{2} , k_{2} = i(c_{1} - c_{2}) \right]\)である。これが、解となっているかを確認すると、
\(y' = -2k_{1}\sin 2x + 2k_{2}\cos 2x  , y'' = -4k_{1}\cos 2x - 4k_{2}\sin 2x = -4(k_{1}\cos 2x + k_{2}\sin 2x) = -4y \)
虚数単位\(i\)が出ているが計算の過程で\(e^{i \cdot \beta x} \left[\betaは式で得られる値 \right]\) が出現し、オイラーの公式である、\(e^{i\theta} = \cos \theta + i\sin \theta\)を導出に利用している。   ▲ 文頭

▲ 文頭

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