部分列とその極限

1, 4, 5, 7, 8, 11, 12, 17, ......をみて何を考えるだろうか。自然数の列で単調増加を満たしている?では、こうしたらどうであろうか。\(\large{a_{1}, a_{4}, a_{5}, a_{7}, a_{8}, a_{11}, a_{12}, a_{17}, \ldots \ldots} \). そう、ある数列の項を取り出したものである、と思うのではなかろうか。元の数列から、その数列の順序を保持して、任意に取り出したものが部分列と呼ばれるものである。文頭で示した自然数の列は見ての通り、元の数列から順序よく取り出した項の右下添え字の数、つまりインデックスを意図したものである。例示の部分列において、第1項:\(\large{a_{1}}\) 、第2項:\(\large{a_{4}}\) 、第3項:\(\large{a_{5}}\) 、第4項:\(\large{a_{7}}\) 、第5項:\(\large{a_{8}}\) 、第6項:\(\large{a_{11}}\) 、第7項:\(\large{a_{12}}\) 、....... であるが、 部分列の項は\(\Large {a_{n_{k}}}\)と表現される。インデックスに着目すると、以下の関係になっている。
第1項:\(\large{n_{1}= 1 }\) 、第2項:\(\large{n_{2} = 4 }\) 、第3項:\(\large{n_{3} = 5 }\) 第4項:\(\large{n_{4} = 7}\) 第5項:\(\large{n_{5} = 8}\)......第\(k\)項:\(\large{n_{k}}\) = 元の数列から取り出した項のインデックス. 数の観点から観察すると2点が重要である。① \(n_{1} \lt n_{2} \lt n_{3} \lt n_{4} \lt \cdots \cdots\)と単調増加が成り立っている。② \(k \leq n_{k}\)が成り立っている。
\(n_{k}, k \in \mathbb{N}\)である。\(k = 1\)としたとき、\(n_{1} = 1\)としよう.\(k = 2\)としたとき、\(n_{2} \lt 2\)とはいえない。なぜなら、\(n_{k}\)は自然数で単調増加から最小でも1増加する。つまり、\(n_{2} \ge 2 \)である。そこで、\( n_{k} \ge k \)が成り立つと仮定しよう。[\(n_{1}=2\)、つまり部分列第一項に元の数列の第二項を選択すれば、常に\(n_{k} \gt k\)が成り立つ。]
\(n_{k}\)が自然数かつ単調増加であるから、\(n_{k+1} - n_{k} \ge 1 \Longrightarrow n_{k+1} \ge n_{k} + 1 \ge k + 1\) (\(\because n_{k} \ge k\)が仮定)より、\(\therefore n_{k+1} \ge k + 1 \). したがって、全ての\(k \in \mathbb{N}\)について成り立つ。あるいは、否定で\(k \gt n_{k}\)が成り立たつとしたとき、\(n_{1} \lt 1\)は成り立たないし、部分列の初項として元の数列の第2項を取り出せば、\(n_{1} = 2 \gt 1\)である。さらに、あるいは、元の数列からの部分列の任意の取り出しと元の数列のインデックスとの関係性を考慮して、部分列の初項のインデックスは1以上、第2項は2以上、第3項は3以上、......であることが分れば、自然数の列での単調増加性により\( n_{k} \ge k \)が成り立つことを理解できるのではなかろうか。ここで、以下に部分列の定義を示す。
【部分列の定義】
自然数の列\(\left\{n_{k}\right\}_{k=1}^{\infty}\)が\(n_{1} \lt n_{2} \lt \cdots \lt n_{k} \lt \cdots \)をみたすとき、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)から選び出してできる数列\(\large{\left\{a_{n_{k}}\right\}_{k=1}^{\infty}}\)を\(\left\{a_{n}\right\}\)の部分列という.

参考にした考えと自分で咀嚼して得た考えで以下の命題が成り立つことを示す。訪問者で厳密化してもらいたい。
命題①:数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が極限値\(\alpha \in \mathbb{R}\)に収束するならば、その任意の部分列\(\large{\left\{a_{n_{k}}\right\}_{k=1}^{\infty}}\)も極限値\(\alpha\)に収束する。
  [補足:元の数列で一つしか存在しない同じ極限値を任意の部分列も保持する、ということ。]
命題②:数列\(\left\{a_{n}\right\}\)のその任意の部分列\(\large{\left\{a_{n_{k}}\right\}_{k=1}^{\infty}}\)が極限値\(\alpha \in \mathbb{R}\)に収束するならば、その元の数列\(\left\{a_{n}\right\}\)も極限値\(\alpha\)に収束する。
上記で数列の各項を表現する記号は高校数学では見たことがないので多少違和感があるが次のように考えれば慣れると思われる。\(\displaystyle \sum_{k=1}^{3} a_{n} = a_{1} + a_{2} + a_{3} \   \left\{a_{n}\right\}_{k=1}^{3} = \left\{a_{1} , a_{2} , a_{3}\right\}\) 和での\(\sum\)記号の開始値と終点の部分を \(\Large{ \}_{開始値}^{終点}}\) 記号の右横につけたと考えれば理解し易い。
【証明】
①:数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が極限値\(\alpha\)に収束する\(\displaystyle \left(\lim_{n\to \infty} a_{n} = \alpha \right) \)ということは、任意の\(\varepsilon \gt 0\)に対して、ある\(N \in \mathbb{N}\)が存在して、全ての\(n \gt N \in \mathbb{N}\)について、\(|a_{n} - \alpha| \lt \varepsilon\ \ \cdots \spadesuit\)が成り立つ。部分列はその数列から自由に取り出せるのであるから、\(\large{n_{k}} \ge k \gt N \)に対応する部分列を取り出し可能である。\(\spadesuit \)より、任意の\(\varepsilon \gt 0\)に対して、ある\(N\)が存在して、全ての\(n_{k} \gt N \in \mathbb{N}\)について、\(\large{|a_{n_{k}} - \alpha | \lt \varepsilon} \)が得られる。従って、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が極限値\(\alpha \)へ収束するならば、その任意の部分列も極限値\(\alpha \)へと収束する。
②:㋑;任意の部分列が収束するということは、任意の\(\varepsilon \gt 0\)に対して、ある\(N \in \mathbb{N}\)が存在して、全ての\(n_{k} \ge k \gt N\)について、\(|a_{n_{k}} - \alpha| \lt \varepsilon\ \ \cdots \blacklozenge \)が成立している。ここで、\(k = N + 1\)と考えても一般性は失われない。\(\large n_{N+1} \ge N + 1 \)であるから\(a_{N+1}\)が含まれる。\(N + 1 \)以降つまり、\(n \ge N +1 \gt N \)について数列\(\left\{a_{n}\right\}\)に含まれる全ての数列項が、その全ての部分列に含まれているので、\(\blacklozenge\)より、任意の\(\varepsilon \gt 0\)に対して、ある\(N \in \mathbb{N}\)が存在して、全ての\(n \gt N\)について、\(|a_{n} - \alpha| \lt \varepsilon \)が成り立つ。したがって、命題②は成り立つ。
㋺ ;背理法で考える。元の数列が収束するのであれば極限値は一意である。ゆえに、元の数列が収束しないのであれば、その元の数列は発散(正の無限大か負の無限大あるいは振動)する。正の無限大や負の無限大では数列は有界ではない、正の無限大の場合、任意の\(M \gt 0\)に対して、全ての\(n \gt N \in \mathbb{N} \)について、\(a_{N} \leq M \lt a_{n}\)と言い得る。\( n_{k} \ge k = n \gt N \)と考えると、任意の\(M \gt 0\)に対して、全ての\( n_{k} \gt N \in \mathbb{N} \)について、\(a_{N} \leq M \lt \large a_{n_{k}}\) [\( n_{k} \ge k = n \)に着目すると、\(n_{k} = n\)であるから、\(\large a_{n} = a_{n_{k=n}}\)] が成り立つ。全ての部分列は発散する、有界ではない。仮定では任意の部分列が収束しているので、「収束する数列は有界である。」という定理と矛盾する。負の無限大も同様の議論である。次に振動ケースでは元の数列は有界であるが極限値が確定しない。例えば、数列\(\left\{( - 1 )^{n}\right\}\)がそうである。部分列では取り出し方で収束する数列にできるが、極限値が一つに定まらない。先の例では、\(\left\{1, 1, 1, ...\right\}\)と\(\left\{-1, -1, -1, ...\right\}\)で極限値が1あるいは-1である。これは任意の部分列の極限値が同一である仮定と矛盾する。以上のことから命題②は成り立つ。
命題①及び②を合わせると、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束し、極限値\(\alpha\)を持つ。 \(\Longleftrightarrow \) 任意の部分列\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)が収束し、極限値\(\alpha\)を持つ。\(\cdots \heartsuit \) この命題の系として、以下が成り立つ。
数列\(\left\{a_{n}\right\}\)において、異なる極限値を持つ部分列が存在するならば、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)は発散する(正への無限大、負への無限大、振動)。\(\cdots \bigstar \)
[証明]
数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束するとして矛盾を示す。このとき、例えば\(a_{n} \longrightarrow K \)とする。そうすると、\({\color {brown} {\heartsuit} }\) によって、任意の部分列も\(\large a_{n_{k}} \longrightarrow K \)が成り立つ。しかし、異なる極限値を持つ部分列が存在する、という仮定に矛盾する。ゆえに、\(\bigstar \)は成り立つ。
単調性について読まれていることを前提にして以下の命題も考えてみよう。
命題 \(\cdots \large{\natural}\)
単調数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束する部分列を持つならば、そのとき、\(\left\{a_{n}\right\}\)も収束し、その部分列と同じ極限値を持つ。
舞台裏)\(\heartsuit\)より数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束するのであれば、全ての部分列は数列\(\left\{a_{n}\right\}\)と同じ極限値を持つ。収束する数列\(\left\{a_{n}\right\}\)の部分列が収束するとしたら、当然、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)はその部分列と同じ極限値を持つ。ゆえに、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束することを示すことが主たる証明になる。
単調収束定理により、単調数列が収束する必要十分条件は、その数列が有界である、ということである。したがい、前述した収束証明は有界を示すことになる。\(\natural\)により、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)は単調である。数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が有界であることを示すために、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束する部分列\(\large {\left\{a_{n_{k}}\right\}}\)を持つという前提を用いる。論証の進め方はこうなるだろう。数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が単調であることは、その部分列も単調であることを暗示する。\(\large {\left\{a_{n_{k}}\right\}}\)が単調かつ収束であることは、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が有界であることも言い得ることになる。
\(\large \left[証明\right] \)
数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が単調増加であると仮定する。この仮定から、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が上に有界であることを示す。単調減少とするなら、同様の議論で下に有界であることを示すことになる。
数列\(\left\{a_{n}\right\}\)の収束する部分数列を\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)としよう。部分数列\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)の各項は単調増加数列\(\left\{a_{n}\right\}\)に由来し、\(\left\{a_{n}\right\}\)の各項の順序を保持している。ゆえに、\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)もまた単調増加数列である。そして、\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)は \(\large \natural\) において収束することも仮定している。したがって、単調収束定理により\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)は\(\large \sup \left(\left\{a_{n_{k}} : k \in \mathbb{N} \right\}\right)\)に収束する。
数列\(\left\{a_{n}\right\}\)は単調増加を前提にしているから、 \(\large \natural\) での数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束することを言うには、単調収束定理により数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が「上に有界」であることを示せばいい。
部分列\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)は数列\(\left\{a_{n}\right\}\)に由来する無限個の要素列であるから、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)の任意の個々の数列項\(a_{n}\)以降に対応した部分列の項\(\large a_{n_{k}} \)を持つ。数列項\(a_{n}\)と部分列の項\(\large a_{n_{k}} \)は共に単調増加ゆえに、\(\large a_{n} \leq a_{n_{k}}\)が成り立ち、\(\large a_{n} \leq a_{n_{k}} \leq \sup \left(\left\{a_{n_{k}} : k \in \mathbb{N} \right\}\right)\)となり、\(a_{n} \leq \sup \left(\left\{a_{n_{k}} : k \in \mathbb{N} \right\}\right)\)が導出された。数列\(\left\{a_{n}\right\}\)は上に有界であり、単調増加であるから、単調収束定理により収束が言い得て、\(\heartsuit \)からも極限値は\(\sup\left(\left\{a_{n_{k}} : k \in \mathbb{N} \right\}\right)\)とならねばならぬことが言える。これで \(\large \natural \) が証明された。もうひとつの証明の方法として、インデックスを主として利用した証明を紹介しておこう。
\(\large \left[証明\right] \)
数列\(\left\{a_{n}\right\}\)は単調増加を仮定とする。\(s , t \in \mathbb{N}\)で\(s \lt t \)のとき、\(a_{s} \leq a_{t} \)が成り立つ。その部分列は、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)から順序を保持して選択されたものであるから、やはり単調増加であり、\(t \leq n_{t} \)であるから、\(\large a_{t} \leq a_{n_{t}} \)を満足する。したがって、全ての\(s \lt t \)について、\(\large a_{s} \leq a_{t} \leq a_{n_{t}}\ \cdots \clubsuit \) が成り立つ。
部分列は単調増加で、仮定で収束を謳っているので、単調収束定理により、その極限値はその上限(最小上界)である。\(\large \alpha = \sup \left(\left\{a_{n_{k}}: k \in \mathbb{N} \right \} \right) \)とおくと、\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\} \to \alpha \)である。この収束の意味することは、任意の\(\varepsilon \gt 0 \)に対して、ある\(M \in \mathbb{N} \)が存在して、全ての\( k \gt M \)について\(\large \alpha - \varepsilon \lt a_{n_{k}} \lt \alpha + \varepsilon \)である。ここで、\(k = M +1 \)とおいても一般性は失われず、不等式を満足する。また、部分列は上限\(\alpha \)を持つのであるから、\(\large \alpha - \varepsilon \lt a_{n_{M+1}} \leq \alpha \)が成り立つ。
また、全ての\(\large p \in \mathbb{N} \gt n_{M+1} \)について、単調増加での議論ゆえに、\(\large a_{n_{M+1}} \leq a_{p} \)が言え、\(p \leq n_{p}\)を踏まえて、\(\large \alpha - \varepsilon \lt a_{n_{M+1}} \leq a_{p} \leq a_{n_{p}} \leq \alpha \ \because \clubsuit\)となる。
そして、ここで\(\large N = n_{M + 1} \)とすれば、全ての\(p \gt N \)について、\(\alpha - \varepsilon \lt a_{p} \leq \alpha \)が成り立ち、\(a_{p} \to \alpha \)が示され、数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が収束し部分列と同じ極限値を持つことが証明された。
\(\varepsilon \)について同じ土俵で扱って良いものか気になるところだが、論証での自然数の推移は\(\large M \left(\varepsilon \right) \lt k = M + 1 \leq n_{M +1 } = N \lt p \leq n_{p} \)であり、自然数\(M(\varepsilon)\)を基準に考えているので、結局、最後の全ての\(p \gt N \)については、\(M \left(\varepsilon \right) \lt p \)となるので、同じ\(\varepsilon \)である。
\(\large \left[ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理(\mathtt{The\ Bolzano-Weierstrass\ Theorem})\right] \)
示す前に補助命題を記す:全ての数列には単調な部分列が存在する。
ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理:全ての有界な数列には収束する部分列が存在する。
この定理が成り立つことを示そう。数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が有界であるとする。補助命題により、この数列はその単調な部分列\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)を持つ。数列\(\left\{a_{n}\right\}\)が有界であるから、その部分列\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)も有界である。その部分列\(\large \left\{a_{n_{k}}\right\}\)は単調かつ有界であるから、単調収束定理により収束する。

参考文献:Jay Cummings "Real Analysis" <English Book>

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