限界利益と損益分岐点売上高
限界利益はビジネスマンなら当然知っておくべき事柄である。
また、専攻に関係なく高校の応用数学(といっても初等的)の演習に組み込まれても良いと思っている。
管理会計で扱われるものである。どんな企業であれ、費用は可変(変動)、不変(固定)費用に分かれる。
ただし、厳密に峻別するには困難が伴い、割り切ることも必要だろう。
可変、不変の接頭辞の分かれ目は生産量あるいは販売量に応じて費用が変化するかである。
例えば、よく企業では直接部門と間接部門に分けて費用管理する。給料でも直接部門の給料は可変で、
間接部門では固定でといった区別をしているかもしれない。
さて、
今、売上高をS可変費用をV不変費用をFとする。限界利益はS-Vで表現される。
限界というのは微分概念を意識しているが、これは定義からもわかるように合計値であるから、
むしろ積分概念(限界利益曲線を積分したものが限界利益とみるのが普通だから)である。
これが理解できなくても一向に問題は無い。通常、企業利益がプラスであるとは、この限界利益が固定費Fを上回っている状態をいう。
マイナスであれば、赤字であり、長く限界利益がマイナスなら、資産ストックがそれほどない、あるいは、
借入で賄うような方策ができない企業は事業撤退を余儀なくされるだろう。
この限界利益の状況を大企業では月次決算で常に意識しているはずだ。
私は住友金属鉱山で金属事業を見てきた(金属事業室勤務で亜鉛・鉛、ニッケル・フェロニッケル事業を担当した)過去があるからだ。
この分析にはまだ利点がある。損益分岐点を知ることが近似的に可能だからだ。
限界利益率は\(\dfrac{S-V}{S}\)で表現される。αを限界利益率としよう。ゆえに、S-V=αSが成り立つ。
最終利益をRとして、R=S-V-Fであるから、R=αS-Fである。
最終利益がゼロ、すなわち損益分岐点がαS-F=0 → S=\(\dfrac{F}{α}\) ---➀が出る。
仮に今、固定費が6000千円で限界利益率が3%ならば、損益分岐点は6000千円÷0.03で損益分岐点売上高が2億円となる。
なぜ、こんなデータが必要かといえば、事業の頑健性の指標となるからである。
現在の売上高が3億あって、損益分岐点売上高が2.5億だとしたら、何かしらの原因で売上減少に直面したとき、
真っ先に赤字へ転落ということもあり得よう。したがって、損益分岐点売上高がどういう状態かも把握しておく必要がある。
また、可変費用にかかわらず、固定費用は常に最小に保つことも認識しておくことだ。
①から損益分岐点売上高を小さくするには、固定費の削減、限界利益率を増大することである。
それには企業ごとに事業特性があるわけであるから、経営者の手腕が問われる。