経済学の基本的な数学応用編

僕が大学2年次に遭遇した、需要の価格弾力性の定義を利用した数学応用を紹介しよう。需要の価格弾力性とは、他の経済条件を所与 とみなして、価格上昇に伴う、その増加割合に対して需要量減少の割合を比で示したもので、定義式は以下のごとく表現される。
\begin{align} \varepsilon =-\dfrac{\dfrac{\varDelta Q}{Q}}{\dfrac{\varDelta P}{P}} \end{align}
マイナスを使っているのは、通常、議論される需要曲線の傾きは負であるから、絶対値で考えているのである。 ⊿は増分記号で、微分は微小変化であるから、⊿を微分記号dに変えて論じる。
価格を\(P\) (Price), 数量\(Q\) (Quantity)とする。売上は\(P\cdot Q\)となる。これを\(R\) (Revenue)とおいて、\(R\)を 全微分することを考える。つまり、\(R\)に影響を与える全ての変数を微小に動かして、\(R\)の増分を求める。全微分には偏微分が 現れる。偏微分記号は \(\partial\) で表される。偏微分とは考察される変数以外は定数とみなし、考察される変数で 通常の微分演算を行うものである。例えば、\(x^{2}z+y-z^{3}\) を \(z\) について偏微分する。 すなわち、\(\displaystyle \frac{\partial (x^{2}z+y-z^{3})}{\partial z}\) = \(x^{2}-3z^{2}\) となる。 偏微分は微分と異なり、分子・分母を切り離しての議論はできない。さて、\(R\) は \(P\) と \(Q\) の 2変数関数であり、\(R\)が全微分可能であれば、
\(dR\) = \(\displaystyle \frac{\partial (P \cdot Q)}{\partial Q} \cdot dQ+\frac{\partial (P \cdot Q)} {\partial P} \cdot dP = P \cdot dQ+Q \cdot dP\) --- ①、価格変化による \(R\) の変動を考察するので、 ①の両辺を \(dP\) で除すと、
\begin{align} \dfrac{dR}{dP}&= P\cdot \dfrac{dQ}{dP}+Q \\ &= Q \left(\dfrac{P \cdot dQ}{Q \cdot dP}+1 \right) \\ &= Q \biggl\{\left(\dfrac{dQ}{Q}\right) \cdot \left(\dfrac{P}{dP}\right)+1 \biggl\} \\ &= Q \Biggl\{\dfrac{\left(\frac{dQ}{Q}\right)}{\left(\frac{dP}{P}\right)}+1 \Biggl\} --- ②  となる。 \end{align} ここで、②に需要の価格弾力性の定義 \(\varepsilon\) = \(\displaystyle -\ \ \dfrac{\left(\dfrac{dQ}{Q}\right)}{\left(\dfrac{dP}{P}\right)}\)を代入して、 \(\dfrac{dR}{dP}=Q \left(1- \varepsilon \right)\) --- ③が導出される。③より得られる帰結として、
\[ {\large 売上高} = \begin{cases} {\large 増収} &\varepsilon &\lt 1 &のとき 左辺が正 \\ {\large 不変} &\varepsilon &= 1 &のとき 左辺がゼロ\\ {\large 減収} &\varepsilon &\gt 1 &のとき 左辺が負 \end{cases} \]

少々、議論として荒っぽいが鉄道会社の運賃値上げを考えてみる。利用者が通勤で用いる鉄道会社が 運賃を10円値上げした場合、代替財が問題だが、考えられるのはバスとの競合であろう。しかし、10円の値上げでこれまでの 鉄道の利便性を捨てて、バスに替えるとは考えにくいだろう。こうようなことから、その場合の需要曲線は価格のわずかな 上昇に対して、反応が鈍い、すなわち非弾力的であると考えられる。ゆえに、鉄道会社の値上げは需要の価格弾力性が1より 小さいので増収となる。なお、代替財でバスをあげたが、もちろん他の鉄道会社との競合も考慮すべきではある。
ここでは、特定の値を求めての議論ではない。この分析を定性分析といい、特定の値を求めての分析を定量分析というが、 経済学では計量分析というのが妥当だろう。それには計量経済学が利用される。
参考までに全微分記述のHTMLソースを下記に示しておく。LaTexの勉強に役立ててもらいたい。なお、通常、単語間の空白をとる 方法として&+nbsp+;(+は結合の意味で用いている)か&+emsp+;があり、僕も用いている。このソースは下記に表示されていない。

価格を\(P\) (Price), 数量\(Q\) (Quantity)とする。売上は\(P\cdot Q\)となる。これを\(R\) (Revenue)とおいて、\(R\)を 全微分することを考える。つまり、\(R\)に影響を与える全ての変数を微小に動かして、\(R\)の増分を求める。全微分には偏微分が 現れる。偏微分記号は \(\partial\) で表される。偏微分とは考察される変数以外は定数とみなし、考察される変数で 通常の微分演算を行うものである。例えば、\(x^{2}z+y-z^{3}\) を \(z\) について偏微分する。 すなわち、\(\displaystyle \frac{\partial (x^{2}z+y-z^{3})}{\partial z}\) = \(x^{2}-3z^{2}\) となる。 偏微分は微分と異なり、分子・分母を切り離しての議論はできない。さて、\(R\) は \(P\) と \(Q\) の 2変数関数であり、\(R\)が全微分可能であれば、
\(dR\) = \(\displaystyle \frac{\partial (P \cdot Q)}{\partial Q} \cdot dQ+\frac{\partial (P \cdot Q)} {\partial P} \cdot dP = P \cdot dQ+Q \cdot dP\) --- ①、価格変化による \(R\) の変動を考察するので、 ①の両辺を \(dP\) で除すと、
\begin{align} \dfrac{dR}{dP}&= P\cdot \dfrac{dQ}{dP}+Q \\ &= Q \left(\dfrac{P \cdot dQ}{Q \cdot dP}+1 \right) \\ &= Q \biggl\{\left(\dfrac{dQ}{Q}\right) \cdot \left(\dfrac{P}{dP}\right)+1 \biggl\} \\ &= Q \Biggl\{\dfrac{\left(\frac{dQ}{Q}\right)}{\left(\frac{dP}{P}\right)}+1 \Biggl\} --- ②  となる。 \end{align} ここで、②に需要の価格弾力性の定義 \(\varepsilon\) = \(\displaystyle -\ \ \dfrac{\left(\dfrac{dQ}{Q}\right)}{\left(\dfrac{dP}{P}\right)}\)を代入して、 \(\dfrac{dR}{dP}=Q \left(1- \varepsilon \right)\) --- ③が導出される。③より得られる帰結として、
\[ {\large 売上高} = \begin{cases} {\large 増収} &\varepsilon &\lt 1 &のとき 左辺が正 \\ {\large 不変} &\varepsilon &= 1 &のとき 左辺がゼロ\\ {\large 減収} &\varepsilon &\gt 1 &のとき 左辺が負 \end{cases} \]

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