経 理


僕自身は経理における資格を何も持ってはいない。住友金属鉱山での工場経理を凡そ2年半、本社でのスタッフ業務(住鉱では査業と 呼んでいた)を凡そ4年というぐらいの経験しか持ち合わせていない。しかし、当然、法人税法、会計書、原価計算、 経済性工学等々の本は読んで裏では勉強していた。だが、基本的な意識の部分で在学中、会計学教授の講義でこれだけ押さえておけば、 後々に役立つというものをおっしゃっていたことが有用となった。聞けば単純なことなのだ。経理取引をすごく大まかに分解すれば、 以下の通りになるだろう。

  1. 資産の増加=負債の減少
  2. 資産の減少=負債の増加
  3. 資産の増加=負債の増加
  4. 資産の減少=費用の増加
  5. 資産の増加=収益の増加
  6. 資産の減少=収益の減少

等々。あとはどういった科目が借方・貸方にくるのかを意識してやれば、初心者でも数か月の 実務経験でバリバリやれる。
余談になるが4年前に税務調査で税務署員と税理士との間ででこんなやりとりを傍らで 仕事をしながら聴いていた。
税務署員が「期末商品棚卸額は期末に送った商品を含んでますか、含んでいませんか。」と 税理士に聞いてきた。このことが、どのようなことを意味するのか?重要なことは、商品を棚卸(在庫)に多く 計上することは原価の流れを少なくすること、つまり利益を多く計上することであり、棚卸を少なくすることは、原価を過大評価し 利益を過小評価することにつながることである(もちろん期間に対応した売上との兼ね合いもあるが。)。税務署の スタンスは、毎決算期間に適切な利益計上をしてもらうことである。この場合、決算期間末に出荷した商品は会社の期末有高に含める べきであったので、正答は「含めています。」となる。ところが、実際は含めておらず、当該商品分を期末売上にしていればよかった のだが。実際問題としては悪質ではないということで、今後、適切な会計処理を行う約束をし事無きを得た。
経理は何も毎日デスクにしがみついて帳簿をつけているわけではない。やはり、動き回るのが好きで、観察力が優れていること が求められる。特に工場はそうである。工場全体の設備を把握しなければならない。全てを固定資産台帳に記載し、減価償却を計算し、 あるいは償却計算をストップし、あるいは除却を実行しなければならない。それに原価計算を行うには製造工程を正確に把握して おくような、ある種、空間認識力のようなものが要求される(新入社員時、指導員に工程を理解していないとヘルメットの上から 叩かれたこともあったな)。また経理に必要とされる能力として各部門との調整能力が必要である。各部門との協力が不可欠な場合 もあるからである。もちろん、現代社会ではPCをある程度、駆使できなければならない。

さらに、大企業では経理に関する社内規定があり、それに応じた経理処理が求められ身勝手な判断はできない。 企業会計原則のひとつである『継続性の原則』に反することになるからである。話が変わるが、過去、ライブドア事件で 決算短信で数字を操作した事例がでたが、言語道断だ。経理は単に数字を自由自在にマジシャンのごとく操っているわけではない。 経理屋としては非常に不愉快な事件であった。


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