実績・予算差異分析

重工業の工場では数量・単価の他に原単位分析をしているだろう。工業簿記を学んだ経験のある人は聞いたことがあるかもしれない。 僕は企業に入って知り、原価計算のテキストを見て、へえ~であった。初めての人に説明しよう。実績数量\(Q_1\)、実績単価\(P_1\)、 予算数量\(Q_0\)、予算単価\(P_0\)とする。数量差は項(\(Q_1-Q_0\))を持ち、単価差は項(\(P_1-P_0\))を持つから、 \(Q_1・P_1-Q_0・P_0\)=(\(Q_1-Q_0\))・\(P_0\)---①+(\(P_1-P_0\))・\(Q_1\)---②と右辺のように分解される。 ①が数量差、②が単価差である。単価差には実際の取引単価には限らないかもしれない。企業によるけれども、仕入品によって 原価法で決めているだろう。 移動平均法とか、FIFO(先入れ先出し;First In First Out)とかLIFO(Last In First Out;後入れ先出し法)等。 工場では、主要生産品の数量に関連づけて操業資材の管理を行う。MQを工場での生産量とする。実績を\(MQ_1\)、予算\(MQ_0\)。 統計学の手法を用いて、過去の実績から、ある操業資材の生産量単位当たり使用量、すなわち原単位を推定しておく。 それを予算原単位\(U_0\)とする。実績上の原単位を\(U_1\)とする。つまり、上述QがQ=MQ・Uとなる。これを頭に入れてやると、 \(Q_1・P_1-Q_0・P_0\)=(\(Q_1-Q_0\))・\(P_0\)+ (\(P_1-P_0\))・\(Q_1\)=(\(MQ_1・U_1-MQ_0・U_0\))・\(P_0\) +(\(P_1-P_0\))\(MQ_1・U_1\)={(\(MQ_1-MQ_0\))・\(U_0\)+(\(U_1-U_0\))・\(MQ_1\)}・\(P_0\)+ (\(P_1-P_0\))・ \(MQ_1・U_1\)=(\(MQ_1-MQ_0\))・\(U_0・P_0\)---③+(\(U_1-U_0\))・\(MQ_1・P_0\)---④+(\(P_1-P_0\))・\(MQ_1・U_1\)---⑤  これが新たに、③が数量差、④が原単位差、⑤が単価差となる。
例えば、亜鉛工場で予算亜鉛生産量6000t、 予算コークス原単位0.8t(亜鉛を1t作るのに800kg必要ということ)、予算コークス単価14,000円/tとし、 実績亜鉛生産量6800t、実績原単位0.7t、実績コークス単価13,000円/tとする。
実績コークス使用金額=6800×0.7×13,000=61,880千円---⑥、 予算コークス使用金額=6,000×0.8×14,000=67,200千円---⑦、⑥-⑦=△5,320千円---⑧。 数量差(6800-6000)・0.8・14,000=8,960千円、原単位差(0.7-0.8)・6,800・14,000=△9,520千円、 単価差(13,000-14,000)・6,800・0.7=△4,760千円。この各差異の和が⑧に一致する。 一般的な名称かどうかわからないが、数量と単価だけの分析を二元分析、原単位を考慮したものを三元分析という。 さらに細かく何らかの重要な要因があるとすれば、4元、5元も可能である。また、差異分析は物に限らない。 労務費にも応用できる。数量差は人員差、人員差も役職ごとでの差、いわゆる構成差とでもいうべき分析ができようし、 単価差もそれらに分けた構成単価差とでも言うべき分析ができよう。
工場(どの大手企業もそうだろうが) では決算期間末だけでなく、月次決算で月ごとに分析・議論をしている。工場費用は規模にもよるが、 年間ん億を超える費用を支出することから、確実な費用把握と分析は大切である。200人ぐらいの小規模な工場でも、 電力代だけで5千万円は毎月かかるのではないだろうか。
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