定額税分析

市場の分析で簡単な数学を用いて有意味な分析ができる。需要曲線が右下がり、 供給曲線が右上がりの常識的な形状で、一次関数形だとする。このとき、需要関数D(p)=a+b・p(b<0)---①、 供給関数S(p)=c+d・p(d>0)---②、また需給の形状関係による切片の位置関係から、a>c---③は確定している。 さらに、この市場での供給参加者は多数いるもの(完全競争)とする。
今、政府が供給者に対して、販売している商品の1単位当たり に定額税Tを設けたとしよう。まず、定額税が無い状態での市場均衡価格は均衡点で①=②であるから、 a+b・p=c+d・p → p=\(\dfrac{a-c}{d-b}\)---④[③及びd>0>bから、ちゃんとp>0は保証されている。 もちろんこれは前提で第一象限での市場均衡価格である、需給の交点の価格が必ず正数を言っているわけだから当然のことである。]
次に定額税が課された場合を考える。供給者サイドでは1単位当たりpの収入であったのが、p-Tとなる。したがって、 供給関数②は\[S(p-T)=c+d(p-T)---⑤\]へと変わる。需要者にとっては①のままである。新しい均衡価格は①=⑤より、 \[a+b・p=c+d・(p-T) → p=\dfrac{c-a-d・T}{b-d}=\dfrac{a-c+d・T}{d-b}= \dfrac{a-c}{d-b}+\dfrac{d}{d-b}・T ---⑥\] となる。⑥の右辺第二項のTを除いた部分、\(\dfrac{d}{d-b}\)の値 の状態を調べると、\[1-\dfrac{d}{d-b}=\dfrac{d-b}{d-b}-\dfrac{d}{d-b}= -\dfrac{b}{d-b}>0[∵b<0]\]ゆえに、(0<)\(\dfrac{d}{d-b}\)<1とわかる。 この事実と共に、④と⑥を見ると、市場均衡価格は\(\dfrac{d}{d-b}・T\)だけ上昇するが、Tすべてが、そのまま価格に反映されない、 すなわち、驚くべきことだが、供給者に課せられた税金分が需要者に100%転嫁されないという事実がわかるのである。 まさに、この事実は完全競争下での需給調整の結果である。
参考文献 MATHEMATICS FOR ECONOMICS AND FINANCE written by MARTIN ANTHONY AND NORMAN BIGGS ; Cambridge University Press reprinted 2000
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