人生が二度あれば

母は3年前に他界した。これは母が79歳のおりに書いたものである。
父は63歳で亡くなった。どこの母親もかわりないだろうが、母は一所懸命、自分のために、僕らのために、働いてきた。 養殖真珠貝の表面を削る仕事、土木作業、そして旅館業。毎晩のごとく、中断して、風呂も入ることなく、夜中の1時、2時まで 皿を洗っていた。そして、父が釣り船で出港する時間前に起きて父の弁当やお客さんの弁当を作っていた。背は、いつのまにか縮み、 腰が曲がり、背骨の湾曲により、歩くことも億劫となっている。そんな母と二人でこたつで向き合って座り、テレビを見る。 「『嵐』の桜井君を最近見ないのう」とちょっとユーモラスな母でもある。そんな時、ある歌の一節が浮かぶ。 「人生が二度あれば...。」井上陽水氏が作ったものである。小学校時代に聞いた歌だが、その時はピンとこなかった。 父も母もまだ、十分、若かったからであろう。だが、今は。「あなたに、人生が二度あれば...」母に感謝。 そして、言う機会を失した、亡くなった父にも感謝。
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