限界利益と経済学

企業に入って初めて「限界利益」という言葉に接した。もちろん、誰かが教えてくれるわけでもなく、 自分で理解をしなければならない。これは管理会計に用いられる、企業の採算あるいは経営分析のひとつのツールとなっている。 既存企業の費用は大別して、販売あるいは生産に伴って変化(とか変動、可変、比例)する費用と 全く変化しない固定的費用に分けられる。前者の費用は変動費、比例費とか可変費用と呼ばれる。 後者は固定費、不変費用と言われる。売上額(あるいは生産額)から変動費を引いたものが限界利益額である。「 限界」という接頭辞は、数学の微分概念に由来する。一単位当たり限界利益はΔ(デルタ)xを1単位あたり売上量として、 Δyをその増分利益と考えたものであり、トータルで観たものが限界利益額(なぜ、限界としたのだろう。 本来これは限界利益曲線での積分値なのだが、利益とすると固定費を引いたものという誤解を招くことと 「単位当たり限界利益」の総和だと明確にするために『限界』をのこしたのかもしれない。 ただし、あくまでも自説。仮に名称をつけるとしたら、「固定費控除前利益額」とでもなるか)ということである。 限界利益額が固定費を上回っていれば、安全圏だが、下回っていると赤字の状態であり、 限界利益がプラスでも相当の利益余剰がなければ事業あるいは企業の存続が難しい状態になる。 と、このように勉強したが、経済学を学んだ僕にはちょっとしっくりこなかった。 経済学では限界利益という用語は出てこないからだ。このつながりについて、今は少しはそうか、と言う状態か。 短期を考える。(短期という期間の定義は通常、与件[理論展開する上での前提]が変化しない期間をいう) 企業は完全競争下前提での利潤最大化を行うとする。そのとき企業の供給曲線は限界費用そのものである。 完全競争下では企業はPrice Taker(プライス・テイカー)となり、市場の需給均衡価格で利潤最大となる。 これがミクロ経済学の基礎理論である。限界費用とはやはり微分概念で一単位あたり増分費用を意味する、 つまり変動費曲線の微分値である。市場均衡での価格PE(price of equilibrium)、 均衡販売数量QE(quantity of equilibrium)、変動費VC(variable cost)、固定費FC(fixed cost)、利益R(return)としたとき、

QE・PE-VC-FC=R


が成り立つ。 このとき、QE・PE-VCが限界利益額である。経済学ではもう利潤最大化が前提されており、等式上のRがプラスとして、 必ず限界利益額が固定費を上回っているのである。 ところが、管理会計ではRの符号(+や-のこと)は前提とはしていない、ということに後になって気づき少しスッキリしたのである。
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