Cバトルがない

 

10月16日(土)

スイム3.8km

目覚まし時計3つのけたたましい音で目が覚める。睡眠時間は3時間少々しかないのだがすっきりとした目覚めである。

日本から持ってきたカレーライスを温め、朝食を摂る。バイクにつむ食料やスペシャルニードに置く食料を決められたバッグに詰め込み準備は完了。出発までに若干時間があるので30分ほど仮眠をとる。

午前5時、“さぁ出発”。トライアスロンを始めたときに、遠くはるか彼方の雲の上と思っていたワールドチャンピョンシップ2004アイアンマンハワイへの旅立ちである。

真っ暗な中、妻の運転する車でスタート会場まで送ってもらう。まずレースナンバーを体に書いてもらわなければならないので、キンカメホテルを通り抜け駐車場のマーキング会場に向かう。

ずらっと長蛇の行列ができている。毎年のことだろうに要領が悪い。30分ほど並んでやっと順番がきた。腕に書くナンバーはマジックではなくスタンプで押していく。右足の前にはナンバーを書き、左足の後ろには年齢を書く。これで追い越されたときに、相手が何歳かがすぐにわかってしまう。

ナンバーを記入した後は、バイクエリアに移動し、食料や水、スポーツドリンクを積み込む。今回も私はグリコのCCDとカーボショッツ、梅チューブ、ビーフジャーキー、塩をバイクに積む。

バイクのセッティングが終わると、次はスペシャルニードの袋を預けに行く。これでスタート前の作業は全て終わった。しばらく妻とおしゃべりをし時間をつぶす。

スタート20分前になったので海に入ることにするが、ここは海岸に降りる階段が1つしかなく、しかもその幅はわずか2mしかない。そこへ1800名もの人間が集中するのだから大混雑である。

さらに海岸に降りたといってもそこは猫の額ほどの砂浜しかなく、後から後から人が押してくるので、必然的にすぐに水に入らなければならない情況になる。

スタート5分前に何とか入水することができ、アップをかねて40ヤード先のスタートラインまで泳いで行く。

ちょうどスタートラインに来たときに、ドォン!という大砲の音とともに2004アイアンマンハワイの戦いの火蓋は切って落とされた。午前7時、さぁ226kmの旅の始まりである。

最初から飛ばしすぎないようペースを考えながら泳ぎ始める。しばらくして体が温まってきたのでペースをあげる。港の外にでると急にうねりが大きくなってきた。ここはハワイ、けっこう楽しいうねりである。

普通のアイアンマンだとスイムの苦手な人がいてうねりがあると恐怖だろうが、ここは選ばれたものたちばかりである。ガンガン泳いでいく。

うねりの上になった時に周りを見回すと、遠くまで見え、カラフルなスイムキャップがバチャバチャやっていて非常に面白い光景である。逆に下になった時は、周りは水の壁で全く何も見えない。(私だけが楽しんでいたかと思ったら、あとで話を聞いてみると、他の選手もこの光景を楽しんでいたようだ。)

上へ下へと楽しみながら泳いでいると遠くに自分の宿泊しているホテルが見えてきた。スタート地点からホテルまでは1500mである。“よだきいぃ”と言って歩いてでも移動しなかった距離なのに泳いでくるなんて、何だか変な気分である。

1マイル(1600m)の地点で最初のターンがある。時計を見ると41分かかっている。ゲッ!遅すぎる。7月の大入島トライの時に右腕を骨折していたので左腕1本で1500mを泳いだときが39分であった。

今回は両腕を使っており、しかも練習もちゃんとやってきている。あまりの遅さに驚くとともに、うねりの大きさにタイムで気づく羽目となったのであった。

“やべー”と思いつつもあまりあせりは出てこない。この大会では私はなんといってもチャレンジャーですから、“しかたねぇーや”という気分である。マイペースで泳ぎ続ける。

水の透明度は宮古島ほどではないが海底までしっかり見えるきれいさである。カラフルな熱帯魚を見ながら、宮古島と魚の種類が違うな、などと変な所に気づいてしまう。

エイが海面の喧騒を全く知らぬが様にゆうゆうと私の下を泳いでいる。水面からわずか1m下はいつもと変わらぬ世界が今日も続いている。

2000mほど泳いだときに、前田さん(コリアで一緒)が横を泳いでいるのに気づく。近寄っていって腕の日の丸を見せようとするが、まったく気づかないでガンガン泳いでいる。しばらく並行して泳いでいたが、コース変更をした時にはぐれてわからなくなってしまった。

1時間もゆうに過ぎ、そろそろスイムも終わりに近づいてきた。しかし今回は1800名も出ているのに全くバトルがない。

私のとったポジションが良かったのかと思っていたが、大会後に他の選手に聞いてみると、やはりバトルはなかったようだ。

さすが決勝レースに出てくる面々。自分の実力を皆わかっているようで、全員が無理のない位置取りをしてスムーズに泳いでいたようだ。(ほかの大会では絶対考えられない。遅い人が前にいたり、逆に早い人が後ろにいたりで、最初は猛バトルである。)

過去最低記録を作って3.8kmのスイムは終了することとなった。

(1時間26分33秒)