young,alive,in love〜恋とマシンガン〜



別に裏切られたなんて思っちゃいないけど。
でも、少しだけ、自分の理性とか良心とかに疑いを持ってしまったその出来事。
こんな考えの自分がいたなんて。
どっかの悪魔みたいだ。ああ、自虐的な表現。

・・・・・優越感ってどんな味?

「あの・・・・。」
おずおずと声を掛けられた。
自慢じゃないけど、逆ナンはよくある話。でも、今回は明らかに違ってる。
すごく清純そう。髪も黒だし、何より美人!!
深刻そうだしなんだろう。
こんな所、先輩に見つかったら、五月蝿いだろうなぁ。
戸惑い気味だったけど、その彼女は意を決したように告げた。
「千石さんとはどういうご関係なんですか?」
「う・・・・・・・。」
なんて答えたらいいのやら。
友達とも違うし、恋人・・・・なんだけど、言っちゃっていいのかな。
所謂、諦めません的な女とは何回か会った(正確には見た)ことあるんだけど、この人はどうも結びつかない。
今にも泣きそうな彼女を連れてあわてて近くの公園に行った。
「で、あんたこそどういうご関係?」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「だんまりって訳?」
盛大にため息をついてやる。さっきは自分で聞いてきたくせに。
こりゃ、千石に来て貰った方がいいかもね。
「ジュース買ってくる。」
そうして、千石に電話したんだ。
なんでか、慌てた様子で、すぐ来るって。
うん、こりゃ何かあるね。確信した。



「越前君!!」
よっぽど、慌てて来たのかすごく乱れてる。
いつもぴしっとしてるのに。久々の制服姿の千石はやっぱり年上って感じがした。
「華南ちゃん。誰に聞いたの?」
「・・・・・・・・檀君。」
大げさに天を仰いで、力なく座り込んでしまった。
「兎に角、越前君は関係ないから、行こう?」
むっ!!関係ないってどういうこと?
迷惑掛けられてんのはこっちだって。
しかも、しかも、仮にも恋人の俺を部外者扱いってどういうこと?
チョー不納得!!
「ちょっと千石!!関係ないってど・・・。」
其処まで、言って口を塞がれた為、もがもがと言葉にならなかった。
「あの・・・・。」
華南さんと言う美しい人がまた、おずおずと話し出した。
「私・・・・・私、千石さんの子供・・・居るんです。」
・・・・・・・は??????
子供????
千石のこと今回ばっかりは本気で恨むかも。
子供なんて、子供なんて最終兵器出されたら、引き下がるしか無いじゃん。
こればっかは俺にもどうしょうも出来ないし。
こんな所居たくない!!
「ごめん、帰るね。」
「えちぜ・・・・。」
どうにでもなっちゃえ。其れくらい自暴自棄になりそうだった。



その夜、華南さんから、電話があった。
「会ってお話したいんです。」

近くの公園。今日は両親共に居ないので、夜でも関係なく出てこられた。
どうしろっての?
千石の馬鹿。でも、嫌いにもなれない。
「こんばんは。」
「・・・・どうも。」
夜とはいえ外はそれなりに冷える。赤ちゃんが居るのに薄着で大丈夫かな?
やっぱり産みたいのかな?
「・・・・・・・私、産みたいんです。だから千石さんとは別れて欲しいんです。」
そりゃごもっともな話で。
でも、俺の意思は無視かいっ?と突っ込みが無いわけじゃない。
そして、千石もそれを承知したと言うことなのだろうか?
さも当然のように言われて、納得しつつも、不納得。
「千石は、なんて?」
「戸惑ったみたいですけど、産んでもいいって。結婚はさきですけど。」
・・・・・・・・・結婚。
この年でリアルに聞こえないはずの単語が急にリアルになった。

「嘘ついちゃいけないんじゃない?」
「!?・・・・千石!!」
其処にはいつの間にか千石が居て。
ああ、やっぱり好きなんじゃん、俺。
誰を、傷つけてもホシイと思ってしまった男。
「妊娠なんてしてないよね?」
「ちょっと!!なんてこと言うの?」
仮にも疑うなんてかわいそうじゃないか?
自分の子供、産みたいとまで言ってくれてる人なのに。
「セックスしてないのに、処女受胎なんて、あるわけないっしょ?」
え・・・・?嘘?
・・・・・・・・・・・えぇ?
訳わかんなくなりそう。
彼女の唇がぎゅっとかみ締められるのを見逃すはずは無かった。
「どうして、男なんかと付き合ってるんですか?しかも、前なら思い出にって言ったら簡単にHしてくれたのに今はすっかりそういうこともしないし。・・・・・・・・・結婚も子供も出来ないじゃないですか?」
もっともな話。でも、俺と千石は出会ってしまった。
いくら後ろ指を差されてももう、戻れない。
それくらい深みにはまってて、抜け出せない。ってか、抜け出したくないし。
「だからって俺の大事な人まで、巻き込むこと無いでしょう?」
言葉って大事。そう強烈に思いました。
大事な人って言ってくれて、本当に嬉しい。
言霊ってあるんだよね。今は其れを感じた。
「もういいです。千石さんなんてがっかりしたわ。」
「ちょっと、それどういうこと?」
今の自分すごく怖い表情してるに決まってる。
でも、俺だって、大事な人をこんな風に言われて黙ってられない。
大体、こんな女に千石の何が解るっての?
「・・・・越前君。」
その一言、ニュアンスで解るよ。やめとけって言いたいんでしょ?
なんで庇うかな?この人は・・・・・・・。
迷惑掛けられたくせに、女には甘いんだから。
「いいよ。行きなよ。、また、明日ね。」
「・・・・・・・・・ハイ。」
走り去ってく彼女を見て複雑な気持ちになった。
それだけ、千石のことすきって事だよね?でも、譲れないから。



「実は、本気で妊娠のこと信じた?」
「ははっ、少しね。」
じと〜・・・・・・・。
「そんな目で見ないでよ。」
「自分が抱いた女くらい覚えてないの?」
そう、把握してりゃこんなに騒ぎにはならないのに。
「う〜ん、思い出せなかったんだよねぇ。ヤッタかヤラナカッタか・・・。」
もう!!直接的な表現に、ほんのり朱に染まってしまう。
「でも、越前君と付き合いだしてから、他の子とはしてないし、興味ないし。」
さらっとすごいこと言いました?
「例え、子供が居ても、だからってその子がすきって事にはならないでしょ?」
酷い話。
でも、こんなに優越感を感じてしまうなんて。
俺は何も与えてあげられないのに・・・・・。
どうして、出会ったの?神様。
「・・・・・ッ・・・・ごめん・・・。俺・・・・。」
「ストップ!!」
涙を唇で拭う様がエロチック。それは俺だけにして。
「リョーマだから。リョーマじゃなきゃ嫌なんだよ。」
いつか別れてしまう日が来るって思ってた。
それは俺の中で絶対で。
所詮、女には敵わないって思ってた。
神様が許すはず無いって思ってたんだ。
でも、千石が言うのなら其れは神様以上に絶対なんだろう。
死が二人を分かつまで。
このぬくもりに触れていたい。



地獄に落ちたって構わないんだよ。





ゴメンネ、神様。
許してダーリン。