| 千石清純誕生記念SS〜千室編 1 片思い編 知らなかった。 あの人の誕生日なんて。どうして、知ってると思う? ただの、部活の後輩が、知ってたら、少しおかしい。 仲良くも無いから。 でも、何気なく、聞いてしまった会話の中であの人が今日十五歳になると知った。 また、差が開いちゃうな。 そう、瞬時に思った。手が、届かない人。 テニスも、この気持ちも何もかも、手が届かない。 其れは仕方ないのかもしれない。 彼は、愛される人だから。・・・・だれよりも。 俺は、そんなんじゃない。 彼には、相応しくないから。 それ以前の問題だと、思うのだけど。 相応しいとか相応しくないとか、そんな関係じゃないのだから。 だから、あの人の事は、見てみない振り。それが、一番良かった。 それが、一番楽だった。 「あー、疲れた。ホント、俺の誕生日?」 「お前のためにスペシャルメニュウだよ!!」 「うわ、ヒデェ・・・・。南なんか奢れーーー。」 「あー、もう早く帰れよ。待ってるんだろ?」 「んー、まぁね。」 待ってる人が居る。 彼ならば、不思議じゃない。女なら、その辺に吐いて捨てるほど、いるはず。 のろのろと、着替える手が急に早くなって。 聞きたくないから。彼のプライヴェートな話など、聞きたくなくて。 だから、目が合うなんて、思わなくて。 「室町、今日暇??」 「え?」 急に、呼び捨て。其れは、彼の癖みたいなものらしい。 でも、暇って?今日、待ってる人が居るんじゃないの? 「実は、お願いがあってさ。」 「はぁ・・・・?」 「家にくりゃわかるから、帰り寄って。」 そしたら、南部長が、 「こら、室町を巻きこむなよ。」 と言った。なんのことだろう? 「いいじゃん。」 軽く、いなすように千石さんが南部長に、抗議する。 訳がわからないうちに、その発言は決定になったらしく、結局家に行くことになった。 「あの・・・・待ってる人が居るんじゃ・・・・?」 「うん、居るよ。可愛いんだからーーーvvv」 千石さんにここまで、言わせる人ってどんなひとだろう? ちくりとした、胸を無視して、逆に興味が沸いてきた。 がちゃ。 重たい扉を開けたら、ふわりと、千石清純の居る空間の匂いがした。 ここで、彼は生活してる。 そう思ったら、なんだか、上手く言えない感情を持ってしまって。 きっと、好きなんだろう。でも、それだから、何だと言うのだろうか。 「ただいま。待った??」 あまりにも、でれでれな声に、千石さんのイメェジがぶっ壊れそうになった。 待ってる人。 居るのに、なんで俺なんかを連れてきたんだろ? どうせなら、二人っきりで過ごせばいいじゃないか。 そう、思った瞬間。 脱力しそうになった。 にゃ〜。 可愛い声を上げて、仔猫が擦り寄ってきたから。 まだ、生まれて間もない感じの、ちっちゃな仔猫。 まさか、と言うか確実なんだけど、待ってる人って。 「千石さん・・・?」 「こいつ、こいつ。」 まったく、悪びれていない。 腹が立つよりも、先に呆れ果てていた。 人じゃないじゃん、と言うタンジュンかつ、メイカイな反応はしないことにした。 「でね、お願いなんだけど、こいつの飼い主探すの手伝ってくれない?」 「はぁ・・・・わかりました。」 二・三件心当たりがある。 そこをあたってみることにします、と言うと、嬉しそうに仔猫によかったなーと笑った。 意外な一面に、驚きを隠せない。 人を食ったような、千石清純イメージしか知らなかったから。 「おっし、じゃあ、飯でも食う?」 そう言って、台所に立とうとする。 慣れてるみたいで、両親は・・・?と聞いた。 「ああ、仕事が忙しいからね。」 それこそ、単純な理由。 息子の誕生日にすら、帰って来れない忙しさなのか。 其れを、わかったらしく。 「この年で、誕生日ってのもね。」 そうか。でも、十五歳だったら、それでもおかしくないんじゃない? にゃあ、と鳴く仔猫を抱きしめながら、そう思った。 この、暖かさが彼を少しでも癒してくれてたのだろうか。 俺だったら、傍にいるのに。 そんな考えを彼が、知る由も無い。 言ったところで、どうにもならない。 彼には、必要ない。 「はい。」 出てきたのは、単純だけど、それなりに美味そうな親子丼。 中学生男子が作るには、出来のいい一品ではないだろうか。 何でも、出来るんだ。 空腹の男子中学生を満足させる量もあったらしく、しばらく沈黙が続く。 かさり、と。 音を立てて、ポケットに、飴があるのが確認できた。 それを、無造作に口にほおりこむ。 「ねぇ、今日誕生日なんだよー?」 「そう、みたいですね。」 「んー、何かくれないの?」 何かって、たった今聞いた(知ってたけど)のに、どうやって何かを用意しろというのだ。 この人は、やはりめちゃめちゃなことを言う。 からんと、口の中で、音を立てて、飴玉が転がる。 「何って、何もないですよ?」 「ふぅん・・・・。」 ふぅんって、ねぇ?無いものは・・・・。 そう思った瞬間。 「勝手に貰うからいいよ。」 そう、言い放って、ぐいっと、いきなり引き寄せられる。 「!!・・・・んっ・・・・!?」 先ほどまで、からんと音を立ててた、飴はお互いの口腔内を行ったり来たり。 強烈な甘味が、さらに増してる。 其れが、千石さんの口に収まる。 「貰いっ!!」 「なっ・・・・!!」 顔が、上げられない。この人の思考なんて、一生かかっても読めない。 そういう、事をする相手なら死ぬほどいるでしょう? ぱっと、立ち上がって、帰ろうとする。 其の手を、ぱしっと、掴んでまた、引き寄せられる。 否、今度は、ソファに、押し倒された。 そうして、また、飴を含んだキスを繰り返し繰り返し。 「まだ、貰ってないよ。」 この人は、なんて事を言うんだ。 そんな・・・・・。 そんな事、言わないで。期待なんて、させないでよ。 貴方は・・・・・貴方はどこまでも残酷だ。 誕生日に託けなくても、欲しいと言われれば、差し出したものを。 誕生日だから、欲しいと言われたら期待してしまう。 その感情が特別なのではないかと。 結局、キスは、飴がなくなるまで、続いた。 息が、出来ないくらい、激しくて、何度も苦しくなって。 「んっ・・・・!?」 「ほら、まだだよ。」 そう、言われたら逆らえない。 成すがままに、貴方のものになって行く。確認も、何もなく。 だから、タイミングを外すのが上手いと、言われるんだ。貴方は。 痕もね、そんなにつけなくても、いい。 証が無くとも、貴方のものだ。 「・・・・あ・・・・・・ッ・・・・んぅ・・・・・・!!」 いいでしょ?と言われたら、そのまま答えるしかない。 目の前が真っ暗に、なっても認めるしかなかった。 「起きたー?」 目の前には、意地悪なあの人と、可愛い仔猫。 心配してるみたいに、にゃあ、と鳴いた。 俺は、ベットに寝てて、千石さんは腰掛けて。 こんな状態で、手を繋いでるのが、こんなに恥ずかしいとは思わなかった。 手を、引っ込めようとしても、それは出来ず。 「どうして・・・?」 「好きだから。」 嘘だと、知っているから。 露骨に、嘘なんてつかないでよ。 ふいっと、顔を背けると、繋いだ手はそのままに、上に被さって来て。 これでは、顔を見られてしまうではないか。 「好きだから、欲しいと思った。それじゃダメ?」 彼が、求めるものは俺じゃないと、知っている。でも。 「ダメ?」 「・・・・・・・ダ・・・メ・・・・・・・・・じゃない。」 ダメじゃない。そんなことは、わかってた。 甘い、キスも貴方のために、捧げましょう。 それが、バースディじゃ無くても・・・・・・・・・・・。 「ねぇ、俺って、意外とヘタレなんだよ?」 その言葉を信じて、いいの? その声を信じていいの? HAPPY BIRTH DAY TO YOU? -------------------------------------------------------------------------------- ヘタレはお前だ・・・・。やおいの三原則きっちり守ってます(笑) ホント、やまなし、いみなし、おちなし・・・・・(死んで来い) 千石さんも託けないと言えなかったんですよ(表現の限界) |