長期間に渉り、無線機・電子工作を趣味としていると次第に、自らアマチュア局として運用していたもの、修理用、自作品等の無線機が貯まってきます。
これらの無線機について、今後なるべく費用を掛けないで無線局を開局してみたい、又はセカンド機として保有したい人に対して適価にて販売したいと思います。 尚、いずれも中古扱いとなりますので受け渡しについては、購入者自ら測定器にて、性能をご確認して戴きたいと思います。

写真でおわかりのように、トリオ社製と八重洲無
線製の144MHz帯初期PLL方式のFM無線機が多数となります。 これはシンセ回路や表示に
汎用のICを使用している為とこの時代では、回
路図もある程度公開されている為、修理、調整
が比較的容易に出来ることにあります。
その他、水晶発振方式の無線機もありますが、
古いものは水晶の不良(発振停止、fズレ大)が比
較的多く発生している事例があり、元々フル実装
は少なく表示に対してもchの抜けが避けられま
せん。
直流電源、マイク、電源コード等の付属品についても全てではありませんが、一部保管してあります。

無線機の修理につきましては、現品を拝見したうえで、その状況、部品の在庫、資料の有無等を考慮したうえでの判断となります。
再調整、整備は技術講習として、取説等の資料を持参下されば、お手伝い致します。 

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中古無線機について

アマチュア無線機の修理例
無線機の修理は、実際どのように行うかを不具合内容に合わせてお知らせしますのでご参考に願います。
 その一
(1)修理対象    型名:TR−7500(トリオ(株))    144MHz帯PLLシンセサイザ方式トランシーバー
(2)不具合内容   SQ不良(SQボリュームを右いっぱいに回してもノイズが止まらない)
(3)その他送受信 特に異常は認められない
(4)参考資料    TR−7500取扱説明書(回路図付 但し、当該機とは内容が異なる)
(5)不具合箇所の切り分け
  受信機のSQには、ノイズ方式、キャリア方式、トーン信号方式等があるが、通常FM受信機の場合は
  ノイズ方式が一般的である。  当該機もノイズ方式であるが、DC制御方式となっており、手持ち回
  路図のAC制御方式と異なっている。 基板のシルク印刷を確認すると回路図はX55-1180-00(ノイズ
  アンプにICを使用)であり当該機はX55-1240-00(アンプにTRを使用)となっており、図番で判断すれば
  後期モデルで回路も異なっている為、参考しかならないことが判った。
   *ここでのAC、DC方式とはノイズ成分をボリュームの前で検波するか、後でするかの違いであり、
    初期のトリオ製無線機はAC方式が多いと思います。 
  SQ回路の切り分けはまず、SQボリュームのホット側をシンクロ又はテスタにて、監視しておきその電
  圧が無信号時と信号入力時でどのように変化するかを見ます。
  AC方式、DC方式とも無信号時に最大電圧で信号入力強度に比例して、低下する。 ある設定値(ボ
  リュームで可変)以下になると、AF回路をスイッチして、音声がでるようになります。当該機の場合は
  元々音声が止まらない障害であり、無信号時のノイズによる電圧がボリュームを右いっぱいにしても
  設定値以下となっている為となります。 確認の為、外部より、ボリュームのセンターピンにDC電圧を
  抵抗を通して印可すると音声が停止する。 又、受信感度はほぼ正常であり、信号入力に比例してボ
  リュームのホット側電圧が低下することより、IF部のゲイン低下(完全に死んでいるわけではなく劣化
  である)によるノイズレベルの減少によるものではないかと推定します。

(6)不良部品の特定と交換
  当該機は他の修理マニアの方々のレポートにもあるとおり、不良率の高いC460を多用しています。
  まず、手っ取り早くそれらをすべて交換し、直らなかった場合は次に進んでもよいと思いましたが、どの
  TRが不良であったかが判らなくなるため、回路の順番に交換すると、Q5でSQは正常復帰となりまし
  た。 残ったTRも念の為全て交換としました。
(7)互換TRについて
  C460の互換TRとしては、CQ出版のトランジスタ互換表をよく利用しておりますが
  、互換TRの設定について、いまいち納得出来ないことがあります。 前期TRのC460の互換TRには
  C461は記載されておりませんが、規格表をみれば全く同じ仕様であり同等品であると考えられます。
   ????   また、例えば互換とされているC1675の欄には何故C460は記載されていないのでし
  ょうか? 互換というのは、互いに使えるとの意味であり互いの欄に記載されるべきではと思います。
  また、廃品種の関係で当該品より、老番品が記載されているとも考えましたが、必ずしもそうではありま
  せん。 また、最大定格が上位のものを記載しているわけでもありません。今回の修理では、C461を
  沢山持っていることもあり、これと交換としました。 但し、パッケージの形状が半丸の後期ロットのもの
  です。 初期の4角ぽいものはリードが初期のC460と同じく黒く変色することより避けた方がよさそうで
  す。
(8):結果
  SQ調整範囲 -11 〜 +2dB/μv と正常になりました。
  その他、周波数ズレと、変調レベル(最大、標準)、及びメータ関係の補正を実施し、送信スプリアス、送受
  信変調歪み等を確認し完了とました。 
     

   基板内TR交換作業(パターン面)                 TR交換作業完了           

    マイク入力へ発信器信号を接続し変調特性の確認を行う

その二

(1)修理対象    型名:FT−227(八重洲無線(株)) 144MHz帯PLLシンセサイザ方式トランシーバー
(2)不具合内容   バンド内低域(144.42MHz以下)にて送信時に発振状態となる
(3)その他送受信 特に異常は認められない
(4)参考資料    FT−227扱説明書(回路図無し)  メーカHPよりのダウンロード版
(5)不具合箇所の切り分けと再調整
  

       低域で発振状態となる             自作のRFプリアンプが取り付けられていた

 このように帯域内の上又は下で、パワーが著しく低下する時や発振を起こす要因としては、逓倍段も含め
 たRF増幅部の帯域特性がフラットになっていない場合が殆どとなります。 当該機の場合は、ストレート
 アンプのみですが、その中でT201コイルのコアを再調整して、ろうで再固定した後があります。
 受信部にもプリアンプを内蔵しており、ある程度知識のあるユーザーが自ら、メイン周波数を中心に再調
 整を行い、その結果帯域が狭くなり、帯域の端っこでは、振込レベルが低下して、回り込みの影響を受け
 発振に至ると考えられます。よって、バンドの帯域をフラットに再調整することで、改善されます。 但し、メ
 イン付近の出力はやや低下しますが、やむを得ません。  送信帯域調整ではAPC付きの無線機の場
 合は一旦APCを解除する又は、PAの被制御電圧を監視(最良点で電圧最低となる)して行うことが必要
 です。  当該機のメモリーCH機能を利用して、上下のCHをスペアナで監視しながら帯域特性を再調整
 して、良好となりました。

(6)その他の不具合
 上の状況確認の写真でもおわかりのように、メータの照明が大変暗くなっています。 よってこれも改
 善することとします。

ランプ切れをグリーンLEDで代用している          白LEDに変更後の状態

  本来はムギ球ですが、当該機では断線に対して、グリーンLED2個で代用としています。 ところが電
  流制限用の抵抗は1本でLED2個のパラ接続へ供給しています。 この場合、LEDの微妙な順方向電圧
  特性のズレで流れる電流が均一にならず、明るさにバラツキがでることがあります。 常燈で抵抗1本の
  場合はシリーズ接続とするべきと考えます。  グリーンLEDは元々輝度が低いことより、高輝度の白色
  LEDへ1個へ変更とします。  最近のLEDは表示用でなく照明用として十分な照度があります。

 (7)その他の調整事項
  再調整を完了し、その他の送受信特性を確認していると、送信周波数の立ち上がりが遅く数100mS
  以上もあり、帯域内の高い周波数でより顕著であることが判りました。(相手局で受信時に変調頭切れ
  となる恐れがある) ブロック図で確認すると、当該機は送受信で、VCOが別であり、PT時に自走周波
  数よりロック周波数へ至るいわゆる引き込みに時間がかかることになります。  よって、VCOの自走
  周波数を微調整してほぼ帯域内の中心にすることにより、立ち上がり時間を短くなるようにしました。
  *受信用のVFO周波数にIF周波数の発信出力を混合するタイプのPLLではこのような遅れは有りま
   せん。 但し、ミキサー回路が必要となることより、スプリアス問題を解決する回路構成となります。
   VCOには、1個で送受信時にIF周波数分をシフトするものもあります。

低域にても綺麗な波形となりました。 メータ照明も明るい!!

参考事項:当該無線機の修理やチェックを行ったのは4台目となりますが、いずれも受信帯域
改造が実施されています。 これは当時いわゆるPチャンのワッチ用だったと思われます。
今や、業務無線は秘匿性を最大の理由として、デジタル化が進んでおり、その改造は無意味と
なっています。よって全て本来の帯域へ戻す逆改修を行っています。 アマチュアの世界では、
アナログのままで、素人の技術レベルや中古測定器で楽しめるレベルであることを願っています。
 人類がもし滅亡するとすれば自らの技術レベルの発達によるものとなるであろうとの憶測も
 あります。 

その三

(1)修理対象     型名:TR−7200GU(トリオ(株)) 144MHz帯水晶発振式トランシーバー
(2)不具合内容    SQ不良 右いっぱいに回してもSQが閉じない  *ナロー時のみ
(3)その他送受信  異常なし  受信感度がやや悪い 20dBNQ感度=+1dB/μv
(4)参考資料     取説
(5)不具合箇所の切り分けと処置
  変調帯域幅をワイドとしてIFノイズを増やすとSQがかかるSQツマミ位置は通常の無線機よりはやや右
  よりではあるが、なんとかかかる。  よってSQ回路としては一応動作していることになる。 勿論信号
  入力があれば正常に開き音声がでる。
  SQ回路にSQボリュームへのノイズレベルを調整する半固定のVR2があるがこれは最大方向でいっ
  ぱいでも状況は同じである。 VR2をいっぱい(0Ω)とするとワイドナロー時のノイズレベル補正用の
  R99とD23は無意味になります。原因としては、高周波、IF、ノイズ増幅等の総合ゲインが減少した事に
  よるSQ用ノイズ減少に依るものとなります。新品当時は正常であったのだから、能動素子や受動素子
  のいずれか又は複数に特性劣化が発生したこととなります。
   今回のような、少し特性が悪いと言う修理は全くやっかいです。 全く動作しない、音がでない等不具
  合がはっきりしているもののほうが遙かに楽です。  一応セオリーどおりに挑戦とします。
  まずIFとノイズ増幅回路のTRを全て交換してみましたが状況に変化はありませんでした。
  そこで、とにかく無信号時のノイズを増やそうとIFのカップリングコンデンサを220PF→330Pへ、又ディス
  クリ後の抵抗を1KΩ→560Ωへ変更としました。  その結果ややノイズが増加してナローでもSQがか
  かるようになりました。
   次にSQ調整範囲を測定すると-3dB/μV〜+1dB/μVと厳しいデータのままです。
  前記の改修がゲインを増やしたのではなくロスを減らしただけの為、臨界点動作に改善が見られない
  のだと思います。そこで、更に高周波部のTR交換へ進むか、もしこれで改善しなければ、周辺部品も
  次々と交換するか?  古い無線機であり、大変悩むところです。
  古い無線機の修理をする場合、オリジナル性を大事にするか?  回路は変わってしまっても、性能ア
  ップを目指すか?は永遠のテーマです。  チョットオオゲサ
  今回は後者として、受信ゲインの増大とNF改善を目指して、てっとりばやい方法として受信プリアンプ
  を組み込むこととしました。
   現在の無線機は大変高性能となっており、又内部にプリアンプを組み込む余裕等全くありません。 
  よって、年代ものの無線機活用にのみ残された楽しみとなります。
  プリアンプにも昔から多くの素子、回路が使われてきましたが、今回は無線機に合わせてあえて当時
  製作された2SK125のベース設置回路を使用することとしました。

  組み込み前に周波数調整用のスライドS
  Wのネジを1本方式として縦方向にて取
  付とする別に移動用として使う訳ではな
  いのでユルミ配慮はロックペイトのみとす
  る。
  

終段TRのスタッドボルトを利用して固定する4
mmのネジなのでしっかりしている。

完成状態

プリアンプはガラスエポキシの両面基板を彫刻刀とルーターを使用してランドを作り
立体配線をしたものです。このほかにもついでにいくつかのプリアンプを試作してみ
ましたので、このプリアンプの性能も含めて自作品の紹介項目を参照願います。

で、プリアンプを組み込んだ結果はどうなったのか? と言う大事なところですが、
  受信感度      +1dB/μV  → -5dB/μV     
  SQ調整範囲   -3dB/μV〜+1dB/μV  →  -10dB/μV 〜 -3dB/μV
とまあまあの改善となりました。  一見すると、シールドもなくこんなもので大丈夫
か?という感じですが、発振する事もなく安定に動作しています。今回は修理とい
うより、改造でした。   

その四
今回はトリオ製無線機のTR−9000,TR−7700,TR−8400等で使用されてい
る周波数設定用アップ、ダウンキー付きであるダイナミックマイクの断線マイクエレ
メントのコンデンサマイク化を行ってみました。

まず、ご存じのように、ダイナミックマイクとコンデンサマイクの動作上の大
きな違いは後者には電源が必要であるということです。
その電圧を得る為にマイク内に電源があれば良いのですが無いので、PT
の電圧をダイオードを経由することにより約0.6Vを得てこれを利用します。
そこでまず、無線機がダイオードを経由したPT信号アースで供給電圧11
V程度でも送信となることを確認します。
これで得た電圧に680Ωを通してコンデンサマイクに供給しています。
コンデンサマイクと抵抗の結合点からコンデンサ33マイクロを通してマイク
ラインへ接続します。 マイク内のPTスイッチは必ず回路の+側へ挿入す
るように配線します。 アース側へ挿入すると、コンデンサの充放電電流の
為、PT動作切り換
えに遅れが発生します。
本マイクの出力レベルはおおむねダイナミックマイクの出力とそれ程変わ
らず約−50〜−60dBm程度と思われます。 多少の違いは無線機本
体の標準変調(マイク感度)調整可変抵抗でアジャストして下さい。
今回はTR−7700にて実験しましたが他の無線機でも使用出来ると思
います。
但し、かなり古い無線機でPTスイッチにより直接12V系のリレーを駆動し
て送受の切り換えを行っているものでは、少し無線機の供給電圧が低下
した場合等にリレーが動作できなくなる恐れがあります。
写真のマイクは私の手持ちでも2個もエレメントの断線が発生し小型のエ
レメントを探して修理するのは今後困難との判断で予備も含めて4個作製
しました。
コンデンサマイクは田舎でも入手可能です。基盤は両面のエポキシ基盤に
ランドを作製しています。 表面には薄いスポンジを貼り実装した後動作確
認をしてシリコンで固定としています。